芸術を遠くから見る

IMG_5105縮小

作品概要

芸術作品の写真を上下反転して遠くから撮影した写真シリーズです。「逆さ富士」の光学的な性質とベンヤミンの思想との類似から着想しています。

 

シリーズ解説

富士山は自然物であり、動物や鳥たちも富士山を目印にします。しかし、湖面に映った富士、つまり逆さ富士を眺めて、それに象徴性を感じるのは人間だけではないでしょうか。

芸術は遠くから見ることで、近くからでは見えない観点が見えてきます。時代性、本物/複製、動き、重い/軽い、大きい/小さい、著作権、…それら多くのことが曖昧となります。芸術を「見る」こととは、絵の手前に立ってじっくりと図像やマチエールを追うことだけではなく、遠く離れて鏡像を見ることこそが、成熟した大人として、芸術を見ること、そして、現実を見るということではないか?そういったことを考えて制作しています。

 

個別解説

パウル・クレー「新しい天使」

※ページトップの作品

ヴァルター・ベンヤミンが所有したクレーの「新しい天使」を上下反転し、遠くから撮影しています。ベンヤミンによるとこの天使は、戦争で荒廃する町や人々を見ています。翼を広げて飛び上がり、目をカッと見開いて、未来に後ずさりしながら、現実を見ているのです。本作では、この「新しい天使」を上下反転し遠くから撮影しています。「新しい天使」は本シリーズの着想の元の一つであります。

 

ヴィト・アコンチ「センターズ」

IMG_5093縮小

「センターズ」はアコンチがカメラを指差し続ける映像作品であり、「I WANT YOU」のキャッチコピーで有名なアメリカ陸軍の兵士募集のポスターのパロディでもありました。また、現代日本の我々にとって記憶に新しいのは、アコンチのパロディとして福島第一原発で行われたパフォーマンス「ふくいちライブカメラを指差す指差し作業員」かもしれません。本作では、時代を超えてきたこのアクションを、上下反転し遠くから撮影しています。

 

展示歴

2019.01.04 富士山展2.0 rusu会場「富士はデジャ・ブ」

Topへ